外国 送金の新たな消費者の支持

振り込みは、支払期日に債務者のほうから債権者の銀行口座に資金を送って支払うわけですから、手形のように商品の売買など取引発生の時点においてこれを交付することにより、債権者は手形割引の方法によって資金化の途があるのとは決定的な違いがあり、そこに手形だけがもっている特別の利用価値があるといってよいでしょう。
しかし、純粋に決済手段としてみた場合には、振り込みのほうが事故の懸念がなく、しかもテレ為替振り込みを利用すれば、専用のデータ通信によって迅速かつ確実な通知がなされ、資金化も相対的に早く完了します。
したがって、金融が緩和して資金に余裕がある場合には、振り込みのほうが利用されやすいことは疑いないところです。
それに、新機能を持つ自動預入支払機(ATM)の設置が進んできていますので、この機械を利用することにより振り込みが簡単に行える環境が整備されつつあることを考慮すれば今後も振り込みが多く利用されるものと見込まれます。
欧米においてはいろいろな消費生活上の支払いにも小切手が利用されるのが一般的であり、むしろその利用が増大しすぎた結果、小切手の利用をできるだけ少なくするための工夫、努力が払われていますが、わが国では、従来から現金選好の傾向がつよいため、消費の分野における小切手の利用もあまり多くはなかったのが実情でした。
その間に新しい決済手段が登場し、それが利用されるようになっているところに、独特の行き方が示されているように思われます。
企業にとっては、手形を振り出し、これを取引先へ交付するための事務負担や発行費用は必ずしも軽いものではなく、従来からその軽減の実現が試みられていましたが、そのために銀行側が開発したものが、この一括支払いシステムです。
このシステムは、もちろん、代金支払い企業の手形発行の代替え策ですから、支払い企業にとっては、手形作成に必要な経費、印紙税の負担などを節減する、手形を流通させることにともなう事故の防止ができるという効果があり、また、商品などの納入企業としても、手形の集金業務から解放されるので領収書作成事務がなくなる、受け取り手形の支払期日管理が省力化される、手形の紛失、盗難のリスクがなくなる、代金債権を支払期日当日資金化できる(手形の場合は交換日の翌日と一日ずれる)などの効果が期待できるものとして、企業サイドにも受け入れられる金融機関の統一商品ともいえます。
このシステムの実施は、いわば手形の利用を少なくするものに他なりません。
ただ、企業の立場からいえば、手形を廃止しようとする企業と、あくまでも手形の有効性は残したいという企業とがあるので、このシステムにも、債権譲渡担保方式と、一括手形に債権譲渡担保を併用させた一括手形併用方式とがあって、企業のニーズに見合ったほうを選べるようにしています。
しかし、このシステムの実施については、当初、公正取引委員会が、システムの構成または運用方法の如何によっては、いくつかの問題が生じると指摘しました。
すなわち、商品納入企業(下請事業者)が取引金融機関を選ぶ余地が少なくなるおそれがある。
代金支払い企業(親事業者)から一括決済システムによる下請代金の支払いに応じることを強制されれば、商品納入企業は手形の利用の場合と違って、自由に金融機関を選択できないし、場合によっては、従来の取引金融機関を変更しなければならないおそれもある。商品納入企業は、代金支払い企業振り出しの手形を裏書譲渡手形(いわゆる回し手言として使うことが多く、これが商品納入企業の信用力を高める効果をもっていたが、手形による決済が廃止されて、一括支払いシステムに移行するとこれが使えなくなる。従来の現金や手形での仕入れ代金の支払いは、代金支払い企業から直接商品納入企業へ支払われていたが、一括支払いシステムでは金融機関を経由して支払われることになるので、金融機関が介在する分だけ支払いが不確実になるおそれがある。支払い代金を金融機関に対する借り入れ金などと相殺されたり、預金として拘束されたりして全額が支払われないおそれがあり、また一括支払いシステムに移行する際に、現金支払い割合が減少するなど、支払い条件が商品納入企業にとって不利に変更されるおそれがあるなどの問題です。
このため、さらに検討が加えられて、こんどの二方式に固まったいきさつがあります。
一括支払いシステムは、若干複雑な方式ですが、簡単に要点を説明してみましょう。
代金支払い企業が商品納入企業に支払い内容を通知します。
支払い企業から商品納入企業ごとの支払いデータ(金額、支払期日など)を元受銀行へ通知します。
支払いデータ磁気テープは支払日(当座貸越可能日)の七営業日前までに元受銀行の事務センターへ送ります。
代金支払い企業が提携する他の銀行と取引している商品納入企業への支払いデータは、元受銀行から提携銀行へ通知します。
一括手形併用方式代金支払い企業が複数の商品納入企業への支払いのため、一枚にまとめた一括手形を振り出し(支払期日ごと)、元受銀行に渡すとともに、原因債権の譲渡を承諾します。
倒債権譲渡担保方式代金支払い企業は、複数の仕入れ先企業に対する支払いを元受銀行へ委任し、元受銀行に売掛金債権を担保として譲渡することを承諾します。
代金支払い企業の支払いデータが商品納入企業(取引先)へ通知されます。
商品納入企業は、支払金額(譲渡担保残高)の範囲内である当座貸越(借り入れ専用ロ座)により借り入れができます。
支払期日に各商品納入企業に対する支払金額を、当該当座貸し越しロに入金、返済し、残額は指定預金口座へ入金します。
こうした仕組みを簡単に図示すればなりましょう。
この一括支払いシステムが関係企業にとって、大きな合理化効果、一口にいえば、取引データと資金決済データを結び付けて高度の一元的な管理体制を確立することに役立つ点は疑いありませんが、銀行をはじめ金融機関にとっても、企業との取引関係を強化できて、手数料収入の増加も期待できるなど魅力があるといえます。
一括支払いシステムには、様々な利点があり、従来の支払い事務の合理化に役立つものと考えられます。
しかし、債権債務の決済は、経済、金融の基礎を成すものであり、新しいシステムの導入は現在の経済活動や金融システムに広範な影響を及ぼす可能性がありますから、慎重に行う必要も無視できません。
一括支払いシステムの導入が、当初、試行という形を採ったのも、そのためでした。
しかし、その後徐々に採用する企業が増加し、順調な拡大を続けています。
現在、一括支払いシステムの銀行間事務取扱いには、磁気テープ(MT)交換方式、支払い明細書交換方式、の二種類があり、MT交換方式が主流になっています。
すなわち、仕向け金融機関(元受銀行)が、代金支払い企業から提出される一括支払いシステムの支払い明細によって磁気テープを作成し、これを磁気テープ編集機構に持ち込みます。
編集機構としての役割は銀行協会が担当しており、仕向け金融機関から持ち込まれた磁気テープ内容を確認のうえ、磁気テープ基準通り、提携金融機関(提携銀行)別の磁気テープに編集し直して、それぞれの提携銀行に交付します。
そうして、元受銀行・提携銀行間の資金決済は、1銀システムを利用し、元受銀行から提携銀行ヘテレ為替として振込通知を行うことにより、他の為替取引とまとめて決済されるようになっています。
一括支払いシステムの今後の進展は、元受銀行・支払い企業、元受銀行・提携銀行間において、支払いデータのやりとりがいかに早くできるか、にかかっているといってよいでしょう。
支払い企業側における会計処理の関係等から、七営業日前までに元受銀行へ支払いデータを引き渡す余裕に乏しい点を見ても、支払いデータの授受迅速化は、今後このシステムが普及していくうえで、大きな課題となるでしょう。
もっとも、銀行間のデータのやり取りにデータ通信を利用すれば、さらに便利でかつ効率的になります。
なお、一括支払いシステムには、他に支払い明細書方式と呼ばれるものもあります。
これは銀行間の支払い明細書のやり取りを、手形交換所における文書交換などによって行うものですが、銀行間の資金決済は、磁気テープ交換方式と同様全銀システムを利用して、データ通信によって行います。
小切手をめぐる新しい動き4国際手形条約の成立現在、世界各国の手形法は、ジュネーブ統一法と英米法に分かれています。
わが国はジュネーブの統一条約にもとづいて手形法を制定、施行しましたから、ジュネーブ法系に属します。
手形の流通に国境はありません。
戦後国際取引の増大にともなって、国際的な決済手段となっている手形に関する各国間の法制の違いが実務処理のために障害となっていることが指摘されて、手形法の世界的統一要求が高まってきました。
これを受けて、一九六六年に開かれた第二十回国連総会において、国連商取引法委員会が設けられ、国際為替手形ならびに国際約束手形に関する条約制定作業が続けられることになりました。
国連の関係委員会の基本的検討の姿勢は、それぞれの国内法については手を加えることなく、国際的取引の分野でのみ利用される国際手形ともいうべき証券の統一規則をつくることであり、作業を進めた結果、一九八八年に条約が成立しています。
したがって、この条約と日本の現行法の違いを知っておくことも必要です。
その大きな問題の一つに、善意取得があります。
日本の手形法が善意取得を認めているように、ジュネーブ統一法系ではこれを認めているのですが、英米法系では、手形を盗んだ者あるいは拾得した者の偽造裏書のある手形を取得しても、それは無効であるとしています。
このため、条約は折衷的立場に立ち、記名式または白地式裏書の所持人が、裏書の連続により権利を証明したときは、裏書に偽造または無権代理のものがあっても手形の正当な所持人とするというように、まず善意取得を認めています。
その理由は、今日国際間の手形取引が郵送などによって行われている実情に合わせて、流通を確保するためであるとされています。
しかし、それだけでは権利者の保護に問題が生じるので、偽造裏書がある場合には偽造者の直接の譲受人は偽造された者に対して、偽造によって受けた損害の賠償請求権を有するものとして、その保護を図ることにしています。
国際手形の譲受人は多くの場合銀行であるから、銀行の情報能力をもってすれば、善意取得となるケースは少ないだろうという見方があるようです。
しかし、国際手形が流通するようになったとき、必然的にその手形当事者には会社または銀行がなるわけですが、国際手形を銀行に持ち込むのは、大企業ばかりでなく、中小企業の多いわが国の特殊な経済構造から考えると、中小企業から持ち込まれる国際手形も相当量に上るとみられるので、手形の善意取得をめぐる紛争が起こらないとは限りません。
そのほか、さまざまな問題の解決が迫られているとはいえ、貿易依存度の高いわが国の場合には、かかわり合いの多い問題であり、無関心ではいられない問題と考えられます。

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